国会「好・珍質問主意書」

本ブログは、衆参両院に提出された質問主意書と答弁書の中から、「これは」というものを、独断と偏見で選び、面白がる目的で設立しました。

「麻生太郎副総理兼財務大臣の北朝鮮から難民が押し寄せてきた場合に射殺することを考えなければならないとの発言に関する質問主意書」立民・初鹿明博君(衆)

 先日、麻生副総理による「武装難民かもしれない。警察で対応するのか。自衛隊、防衛出動か。射殺ですか。真剣に考えなければならない」発言がありましたが、衆院だと逢坂誠二代議士か初鹿明博代議士あたりが、この手の「失言」を必ず拾って、クソリプを内閣に飛ばすというお仕事をなさっています。御二方の間でどちらが先に出すかという相談などはあるのでしょうか。

 ただ、難民への対応はどうするのか、私としても興味深いところなので、質問自体は悪くないかと思います。

 今回も、一問一答形式でご紹介します。

麻生太郎副総理兼財務大臣の北朝鮮から難民が押し寄せてきた場合に射殺することを考えなければならないとの発言に関する質問主意書

衆議院議員初鹿明博君提出麻生太郎副総理兼財務大臣の北朝鮮から難民が押し寄せてきた場合に射殺することを考えなければならないとの発言に関する質問に対する答弁書

 九月二十三日、麻生太郎副総理兼財務大臣宇都宮市の講演で、北朝鮮有事の際に大量の難民が日本に押し寄せてくる可能性があるとした上で、「武装難民かもしれない。警察で対応するのか。自衛隊、防衛出動か。射殺ですか。真剣に考えなければならない」と発言したと報じられております。
 我が国は難民条約を締結しており、難民が漂流してきた場合、基本的には条約の趣旨に沿って難民を保護しなければならず、いきなり射殺することは認めていないと考えます。
 仮に武器を所持している場合は、武装解除を求め、その求めに応じない場合は上陸を拒むという対処が適切だと考えます。
 また、仮に武器を使用してきた場合は、警察官職務執行法などにより、正当防衛および緊急避難の範囲で警察官、海上保安庁、入管の職員も職務執行に伴う武器使用を認めています。
 以上を踏まえ、以下質問します。

 前文は、常識を論じている感じですね。

一 難民対処のために防衛出動することを認めている法律はありますか。

 お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、防衛出動を命ずることができる場合は、自衛隊法(昭和二十九年法律第百六十五号)第七十六条に規定しているとおりである。

 一般的な表現に直すと「ググレカス」、といったところでしょうか。

 
二 難民を射殺する法的根拠について、どの法律のどの規定に基づいて相手を射殺することが出来るのか、政府の見解を伺います。

 お尋ねの趣旨が明らかでなく、一概にお答えすることは困難である。

 同じく、「何言ってだこいつ」という答弁ですね。というか、前文では割かし丁寧に前提状況を書いていますが、何故それを質問本文に書かないのでしょうか。質問主意書作成能力に問題があると言わざるを得ません

 

三 北朝鮮有事が発生し、船舶などにより難民が漂流した際にどのように対処するかを定めていますか。定めているのであれば、その手順はどのようになっていますか。

 一般論として、海を渡って我が国に大量の避難民が流入してくる場合には、関係省庁が連携し、現行法令の枠組みの中で必要な措置をとることとしているが、具体的な内容については、今後の対応に支障を及ぼすおそれがあることから、お答えを差し控えたい。

 これは興味深い質問ですが、確かに武装の有無の確認など、具体的な内容を公開すると、相手方に対策されてしまう危険性があるため、致し方ないでしょう。

 
四 副総理という立場にあるものが、難民が来た場合に射殺するという発言をすることは、難民条約を締結している国として不適切だと考えますが、政府の見解を伺います。

 平成二十九年九月二十三日の宇都宮市でのセミナーにおける発言については、麻生国務大臣が政治家として発言したものであり、政府としてお答えする立場にないが、有事の際に想定され得る様々な事態について、聴衆の問題意識を喚起する趣旨からなされたものと承知している。

 「政府としてお答えする立場にない」で切っていれば、安倍総理外遊中につき総理を臨時代理していた麻生太郎副総理の名前で「知らねーよ」と答弁するという珍答弁書が出現し、面白いところだったのですが、ちゃんと無難なところを答えていますね。

 クソリプから、結構重要な内容に切り込んだ質問主意書でしたが、フォーマットがなっていないため、答弁が引き出せないという残念な結果でした。