「国家公務員の懲戒処分に関する質問主意書」民主・長妻昭君(衆)
先日、「キャリア官僚のエリート度に関する質問主意書」をご紹介しましたが、長妻代議士は、他にも質問主意書史に残る数々の名質問を出してきました。
本ブログの目的の一つに、これらの好・珍質問主意書をまとめて保存し、広く後世に伝えることがありますので、本国会のものとのバランスを考慮しつつ、だんだんにご紹介していきたいと思います。
さて、今回ご紹介するのは、平成15年、小泉内閣時代に当時民主党の長妻昭代議士が提出した、「国家公務員の懲戒処分に関する質問主意書」です。「国家公務員って、どれくらい、どんな不祥事をやらかして懲戒を食らっているの?」という、素朴な疑問に答えさせた、一見すると好質問ですが、これはとんでもない「珍」です。右紹介する。
衆議院議員長妻昭君提出国家公務員の懲戒処分に関する質問に対する答弁書
一 特別職、非常勤職員等を含むすべての国家公務員についてお尋ねする。
懲戒が無い国家公務員はどのような職で、それぞれ何人おられるか。
二 特別職、非常勤職員等を含むすべての国家公務員のうち、懲戒がある国家公務員についてお尋ねする。
1 免職、停職、減給又は戒告等の懲戒処分に関して、公表基準を定めて、公表している府省庁等があれば、その府省庁等の名前と、それぞれの公開基準の概要と公開項目をお示し願いたい。
「すべての国家公務員について」、懲戒がない国家公務員は何人いるの?懲戒処分について、全員分教えて?というこの質問、全部の官庁が、職員全員について照会するという、気の遠くなるような作業が発生しています。
答弁を見てみましょう。
一について
お尋ねの「懲戒が無い国家公務員」が具体的にどのようなものを指すのかが必ずしも明らかではないが、国家公務員(国会及び裁判所の国家公務員を除く。以下同じ。)のうち、国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)第八十二条に規定する懲戒処分又はこれに相当する他の法律の規定による懲戒処分の対象となるもの及び職務上の義務違反又は非行を理由とする罷免(退官、解任等を含む。)を定める法律(これに基づく命令等を含む。)の規定が個別に設けられているもの以外の国家公務員の職名等及びその人数は、平成十五年四月一日現在、別表第一のとおりである。
二の1について
懲戒処分を公表するに当たっての基準等(以下「公表基準」という。)を定めている府省等並びにそれぞれの公表基準及び公表項目の概要は、別表第二のとおりである。
なんと、ちゃんと調べて答えています。
別表に懲戒処分を受けた国家公務員が列記されていますが、答弁書が144頁に及ぶ、非人道的な事態になっています。
「そんなに不祥事が多いのか?」とお思いかも知れませんが、ちょっと待ってください。
自衛隊は、全員国家公務員なのです。ちなみに、懲罰事由はほとんどが、「交通法規違反」と「遅刻」です。これをいちいち全部調べて表を作った防衛庁(当時)の役人の顔が目に浮かぶようですね。
同じくらい多いのは、「郵便局」。そう、このとき、まだギリギリ民営化は「決まっていたけどされていない」時だったのです。総務省のお役人も、「長妻の思い付きが、あと少し遅かったら」と涙をのんだことでしょう。
長妻代議士は、この答弁書を受け取って、どんなリアクションをしたのでしょうか。「ふーん、たくさんいるね」ならいい方で、「統計としてデータ処理しろ」と秘書が申し付けられたのではと、心配です。
一人で全部打ち込むの、どれくらいかかるでしょうね。