国会「好・珍質問主意書」

本ブログは、衆参両院に提出された質問主意書と答弁書の中から、「これは」というものを、独断と偏見で選び、面白がる目的で設立しました。

「GPS端末等により位置情報を取得する捜査に関する質問主意書」希望・階猛君(衆)

  今年3月、令状を得ずにGPS位置情報端末を取り付ける警察の捜査は違法であるとの判断を、最高裁が下しました。

 「とのことだけど、で、お前ら警察はどうするの?」という質問主意書が、希望の党所属の階猛衆議院議員より提出されました。「あーあ、ついに来ちゃったよ」という感じですね。普通に炎上案件です。右紹介する。

GPS端末等により位置情報を取得する捜査に関する質問主意書

一 本判決は、GPS捜査について、「その特質に着目して憲法、刑訴法の諸原則に適合する立法的な措置が講じられることが望ましい」としている。この点に関して、次の事項を明らかにされたい。
 1 GPS捜査を現行法上の捜査手法により実施することは、本判決により一律に否定されるのか否か。政府としての本判決についての見解を明らかにされたい。
 2 政府は第百九十三回国会の答弁第一五三号(「衆議院議員初鹿明博君提出GPS捜査違法判決に関する質問に対する答弁書」)において、本判決を受けて警察庁が通知(警察庁丁刑企発第十五号、丁支発第二十二号)により控えるように指示した捜査は、「捜査対象車両に移動追跡装置を取り付けて行う捜査」であるとしているが、捜査対象者の所持品にGPS端末を取り付ける形での捜査の実施は認めているのか。

 閣僚経験者だけあって、質問がカッチリしていますね。「お答えすることは困難である」で逃げるのは無理なようです。

一の1について

 お尋ねについては、関係省庁において御指摘の判決の分析を行った上で必要な検討を行うこととしている。

一の2について

 現在、関係省庁において御指摘の判決の趣旨を踏まえつつ、捜査対象車両以外の物を対象としたものも含め、移動追跡装置を取り付けて行う捜査の在り方について、必要な検討を行っているところである。

「ちょっといま、どうするか考えてる」という答えが出てきました。まあ、実際そうなんでしょう多分。次に、携帯電話の位置情報についての質問が続きます。

二 位置情報を取得する捜査手法として、携帯電話のGPS機能等により得られる使用者の位置情報を、捜査機関が電気通信事業者を介して取得するという捜査(以下、「携帯位置情報捜査」)が存在する。かかる捜査に関して、以下の点を明らかにされたい。
 1 総務省作成の「電気通信事業における個人情報保護に関するガイドライン」(以下、「本ガイドライン」)に基づき、平成二十八年度において捜査機関が電気通信事業者から利用者の位置情報を取得するために令状の発付を受けた件数はいくつか。
 2 「携帯位置情報捜査」も、対象者の所在地に関わらずその位置情報を取得するという点ではGPS捜査と変わりはない。本判決を踏まえ、「携帯位置情報捜査」についても新たな立法措置を講じることなく現行法上行うことは許されないと解すべきではないか。政府の見解を示されたい。
 3 本判決を受けて、本ガイドラインの「携帯位置情報捜査」に関する規定を改正する予定はあるか。


二の1について

 警察庁としては、お尋ねの件数は把握していない。
二の2及び3について

 御指摘の判決は、「車両に使用者らの承諾なく秘かにGPS端末を取り付けて位置情報を検索し把握する刑事手続上の捜査」について判示したものであるが、その趣旨が御指摘の「携帯位置情報捜査」に及ぶか否かについては、今後、関係省庁において必要な検討を行うこととしている。

 

 今回の「GPS位置情報端末」違法判決の効力が携帯電話端末に及ぶかどうか、警察庁として解釈が定まっていないようです。

 

三 「携帯位置情報捜査」の運用等に関して、次の事項を明らかにされたい。
 1 本ガイドラインに基づく「携帯位置情報捜査」において継続的に対象者の位置情報を取得する場合、その継続時間は最長でどれくらいとなるのか。
 2 本ガイドラインに基づく「携帯位置情報捜査」において、一回の令状によって対象者の位置情報を取得できる期間について、政府内部で制限を設けているのか。
 3 現行の本ガイドラインに基づく「携帯位置情報捜査」の運用上、捜査機関が本ガイドラインに基づいて位置情報を取得した場合、位置情報を取得された捜査対象者には位置情報の取得があった事実について事後的な通知がなされていないと解してよいか。

 

 令状が出たとして、ある瞬間の位置情報を一回だけ取得しても仕方ないので、確かに「どうするんだろう」と、単純に気になりますね。

 

三の1について

 お尋ねの「継続的に対象者の位置情報を取得する場合」の意味するところが必ずしも明らかではないが、警察においては、個別具体的な事案に応じ、裁判官の発する令状により、必要な捜査を行っているものと承知しており、一概にお答えすることは困難である。
三の2について

 警察においては、個別具体的な事案に応じ、裁判官の発する令状により、必要な捜査を行っているものと承知している。
三の3について

 御指摘の「事後的な通知」については、警察においては行っていないものと承知している。

 

 今後の具体的な運用については、ちゃんと木鼻答弁で逃げますね。

 いずれにせよ、最高裁で負けた以上、GPS位置情報はあまり積極的に使用できないでしょう。