国会「好・珍質問主意書」

本ブログは、衆参両院に提出された質問主意書と答弁書の中から、「これは」というものを、独断と偏見で選び、面白がる目的で設立しました。

「漂着北朝鮮漁船」関連質問主意書、立民・逢坂誠二君(衆)

 最近話題の、北朝鮮から漂着する木造漁船に関連した質問主意書を、おなじみ立憲民主党逢坂誠二代議士が2本提出、答弁書が公開されました。なんだか逢坂代議士ファンサイトみたいになっていますが、質問主意書提出件数自体が多いですからね。

 質問自体がいつになく具体的かつ、そもそも政府が積極的な北朝鮮への強硬対応に発破をかける、国民の北朝鮮への不安と不信に寄り添った内容になっていますが、そういえば北朝鮮漁船に機材等を略奪された灯台は、逢坂代議士の選挙区でしたね。

 よって、地元住民を代表して政府仕事しろと要求する、「地に足の着いた」質問主意書になっています。私としても注視している問題なので、独断と偏見でこれは「好質問」とします。右紹介する。

 

無人の国境離島地域の保全に関する質問主意書

一 松前小島のような無人の国境離島で、国の行政機関の施設として監視カメラなどが設置されている事例は、現在、どの程度か。政府の把握するところを示されたい。

 

一について

 御指摘の「松前小島」は、有人国境離島地域の保全及び特定有人国境離島地域に係る地域社会の維持に関する特別措置法(平成二十八年法律第三十三号)第二条第一項第一号に規定する領海基線を有する離島(以下「国境離島」という。)には該当しない。
 また、内閣府において確認している限りでは、現時点で、国境離島のうち現に日本国民が居住していないものに国の行政機関が設置している監視カメラの数は七十五台である。

 

 なるほど、法的に「国境離島」は定義されており、松前小島は「国境離島」には該当しないんですね。なお、「離島」も法的に定義されているので、どちらかといえば

単に「離島」とした方が、質問の趣旨に近い回答が得られたかと思われます。

 

二 松前町水産課長は「想定外の事態。国に監視カメラの設置などを要望したい」と述べたとされるが、松前小島は「我が国の領海、排他的経済水域等の保全等に寄与すること」は大であり、国の行政機関の施設として監視カメラなどを設置し、常時監視を行うべきではないか。政府の見解を示されたい。

二について

 御指摘の事案も踏まえ、引き続き、関係機関が連携し、我が国沿岸部の警戒体制を強化するなど、不審者対策や領海警備に万全を期すこととしており、必要に応じ更なる対策を検討してまいりたい。

 

「引き続き~」は「既にやってます、とくに変えるつもりはありません」という意味ですが、「必要に応じ更なる対策を検討」は、「もっと仕事します」という意味なので、これは言質を取りましたね。


三 今回の事案では、松前さくら漁協が管理する小屋の内部が荒らされ、保管されていた物品がほとんど失われるという事態に至った。今回の事案で窃盗行為を行った者は概ね特定されているものの、今後、窃盗行為などの犯人が必ずしも特定されるとは限らない。このような無人の離島の管理小屋は当該海域で操業する漁業者の緊急避難場所としての役割も果たしており、その機能が損なわれることは、悪天候時、漁業者の人命の危機につながるものである。このような悪意ある不審船による無人の国境施設で生じた盗難、破壊などの被害を補償する公的制度は存在するのか。存在しないとすれば、政府は創設すべきではないか。見解を示されたい。

三について

 お尋ねの「無人の国境施設で生じた盗難、破壊などの被害を補償する公的制度」の意味するところが必ずしも明らかではないが、御指摘の事案については、平成二十九年十二月八日現在、関係機関において事実関係の確認を行っているところであり、政府としては、その結果を踏まえ、適切に対処してまいりたい。

 

「お答えすることは困難である」で済ませることも可能なところ、わざわざ「適切に対処」に言及したのは興味深いです。なにかやるんですかね。

 

北朝鮮から漂着する木造船に起因する諸問題に関する質問主意書

 

一 過去三年間の北朝鮮からの日本海沿岸への漁船等の漂着数はどの程度か。また取り調べを受けた者の数はどの程度か。政府の把握するところを明示されたい。

一について

 お尋ねの「北朝鮮からの日本海沿岸への漁船等」の意味するところが必ずしも明らかではないが、海上保安庁においては、平成二十六年から平成二十八年までの三年間において、朝鮮半島からのものと思われる漂流・漂着木造船等を百七十六件確認している。
 また、お尋ねの「取り調べを受けた者」の意味するところが必ずしも明らかではないが、海上保安庁においては、平成二十六年から平成二十八年までの三年間において、朝鮮半島からのものと思われる漂流・漂着木造船等からの生存者を五名発見しており、当該生存者から漂流・漂着に至った経緯等について事情聴取を行っている。

 

「言ってることよくわかんないけど、やる気があるから質問の意図を忖度して答えるよ」という、「やればできるじゃねえか」答弁ですね。3年間で175件とは、かなりの数だと思います。

 


二 韓国の国家情報院は、北朝鮮が今年、中国漁船への漁業権販売で約三千万ドルの外貨を獲得していると韓国の国会で報告し、一五〇〇隻あまりの中国の漁船に当該海域での漁業を許可しており、例年の三倍の規模と推定される。この北朝鮮の中国への漁業権の売却にともない、北朝鮮の漁船は沖合に出て操業せざるを得なくなり、日本のEEZ内にある大和堆付近に集結し違法操業を続けていると認識しているが、このような理解でよいか。
三 二に関連して、北朝鮮の漁船が日本のEEZ内にある大和堆付近に集結し違法操業を続けていることを政府は把握しているのか。見解を示されたい。
四 三に関連して、日本のEEZ内にある大和堆付近の海域での北朝鮮の漁船の違法操業は、わが国の漁業資源を損なうものであり、また今次の多数の木造船の漂着の原因となっていると思われるが、これに対して政府はどのように対応し、北朝鮮の漁船の違法操業を止めさせるのか。政府の今後の取り組みを具体的に示されたい。
五 北朝鮮の漁船は沖合に出て操業せざるを得なくなり、日本のEEZ内にある大和堆付近に集結し違法操業を続けている事実に対して、政府は何らかの手段でこれまで北朝鮮に抗議を行ったことはあるのか。

 

二から五までについて

 大和堆周辺の我が国の排他的経済水域において、北朝鮮籍とみられる漁船による違法操業が行われていることは把握しているが、その背景の詳細については、今後の対応に支障を来すおそれがあることから、お答えを差し控えたい。当該違法操業については、我が国の漁業者の安全操業の妨げにもなっていることから、当該水域において、水産庁の漁業取締船及び海上保安庁の巡視船を重点的に配備し、放水等の厳しい対応により当該漁船を退去させている。今後とも、このような措置により当該違法操業の防止に努めていく所存である。また、当該違法操業について、在中華人民共和国日本国大使館を通じて、北朝鮮側に対して厳重に抗議を行っているところである。

 

 これ、束ねてはいますが、ちゃんと一つ一つ回答していますね。主務官庁も別個だと思われますが、なんなんでしょう。


六 松前小島の管理小屋のシャッターが壊され、管理小屋内部の物品、灯台ソーラーパネルの一部も無くなっていることが明らかになったが、かかる事案は、刑法第百三十条(住居侵入罪)ないし刑法第二百三十五条(窃盗罪)に該当し、罪を犯した者は日本の法令に従って処罰されるという理解でよいか。

 

六について

 犯罪の成否については、捜査機関が収集した証拠に基づいて個々に判断すべき事柄であることから、政府として、お答えすることは差し控えたい。

 

 これは、建前としては地方自治体警察が判断することなので、中央政府としては回答できないということでしょう。


七 六に関連して、民法第七百九条でいう「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」に基づいて、保護法益を犯した者には賠償責任が生じるという理解でよいか。

七について

 お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負うこととなる。

 

でしょうね。


八 七に関連して損害を賠償する責任が保護法益を犯した者に生じたとしても、北朝鮮から木造船で漂着した乗組員にその賠償責任を果たす能力があるとは思えず、現実には管理小屋を所有する漁協が一方的な被害を受けるだけという見方が漁業者に共有され、深刻な不安のもとになっている。政府はこのような事案に対して、適切な対応を行い、漁業者の不安を払拭すべきではないか。またこのために適用できる何らかの政府の支援制度は存在するのか。見解を示されたい。
九 松前小島では灯台ソーラーパネルの一部が無くなっていることが明らかになったが、このような事案は灯台の機能そのものを喪失しかねない深刻なものであり、漁業者の操業に不安を抱かせるとともに、海難事故に結びつくものである。政府はこの事態を深刻に受け止め、再発防止に努めるべきではないか。政府の今後の対応策について、具体的に示されたい。

 

八及び九について

 お尋ねの「事案」(以下「本件事案」という。)については、平成二十九年十二月八日現在、関係機関において事実関係の確認を行っているところであり、政府としては、その結果を踏まえ、適切に対処してまいりたい。

「適切に対処」はするんですかね。


十 北朝鮮国内の公衆衛生事情は相当悪いものと多くの専門家に指摘されており、漂着した木造船の乗組員が感染症のウイルスを保有していることも想定される。感染症対策の観点からも、このような漂着した木造船にどのような対策を講じているのか。また函館湾などの人口密集地のそばに木造船を曳航するのは妥当であったのか。政府の見解を示されたい。


十一 十に関連して、木造船の乗組員が日本国内でのテロ行為を行う意思を秘匿したまま函館港などに曳航されることを意図し、港内に曳航されたのちバイオテロを行った場合、函館市民は甚大な被害を受けかねず、人口密集地にある港に木造船を曳航することは相当に慎重であらねばならない。今回の曳航は妥当な判断だったのか。またバイオテロなどの準備がないことなどを確認するなど船内を完全に調査した後の措置であるのか。政府の見解を示されたい。

 

十及び十一について

 本件事案に係るえい航の実施に際しては、函館港外にえい航する前に、感染症対策として、検疫所長が検疫感染症の病原体が国内に侵入するおそれがないことを確認したほか、海上保安庁の立入検査において、テロ行為の準備がないことなどを確認しており、適切に対応したものと考えている。

 

 これは、正面からの「ちゃんと仕事してるのか」「具体的に、こういうことをしてます」やりとりですね。どうでもいいし、決まりなんでしょうが、「えい航」という表記は気色悪いですね。文科省に文句を言いたいです。


十二 今次の北朝鮮からの複数の木造船の漂着は、政府が各省横断的に取り組む問題であると考える。当該地域の住民や日本海を漁場として漁業を営む方々は深刻な不安を持っており、海上保安庁や警察の真摯な取り組みには敬意を表するものの、政府として対応担当部署を明示し、住民や漁業者の不安の払しょくを図るべきである。その場合、政府の当該事案の主たる担当省庁はどこになるのか。見解を示されたい。

十二について

 北朝鮮からの木造船の漂着に対しては、関係省庁が緊密に連携して対応することとしており、お尋ねについてお答えすることは困難である。

 せやな。