国会「好・珍質問主意書」

本ブログは、衆参両院に提出された質問主意書と答弁書の中から、「これは」というものを、独断と偏見で選び、面白がる目的で設立しました。

「日本共産党と「破壊活動防止法」に関する質問主意書」民主(当時)・鈴木貴子君(衆)

 今回は、過去のものから。平成26年に当時民主党に所属していた鈴木貴子代議士(北海道7区)が提出した、「政府は今でも日本共産党は、暴力革命をやらかす危険のある団体と認識しているのか」という質問主意書をご紹介します。

 鈴木貴子代議士といえば、質問主意書界のレジェンド、鈴木宗男元代議士の娘さん。宗男氏が新党大地を立ち上げたときの選挙で、当時中学だか高校生だった貴子さんも宣車に乗り込んで手を振り、「未成年者の選挙運動は公職選挙法違反では」という、クソどうでもいい物言いをつけられていましたね。

「それじゃあなにか、小学生が自分の家の店を手伝うと労基法違反なのか」とか、益体もない議論が展開されていたのを覚えています

 父親譲りのセンスによる好質問主意書ですが、民主党共産党選挙協力に踏み切った際に、アカとは一緒にやれないこと「国家間の相違」を理由として離党(届は受理されず除名処分)し、現在は自由民主党額賀派に属しています。

 すると、「共産党はテロリストなの?」というこの質問主意書は、後の民主党離党の伏線とも見ることができます。そんなわけで、右紹介する。

 

日本共産党と「破壊活動防止法」に関する質問主意書

衆議院議員鈴木貴子君提出日本共産党と「破壊活動防止法」に関する質問に対する答弁書

 

日本共産党と「破壊活動防止法」に関する質問主意書


 日本共産党と「破壊活動防止法」(以下、「破防法」とする)に係る、過去の政府答弁を踏まえ、以下質問する。

 

一 「破防法」で定める、暴力主義的破壊活動とはどのような活動であるか説明を求める。

 

 

一について

 暴力主義的破壊活動とは、破壊活動防止法(昭和二十七年法律第二百四十号)第四条第一項各号に掲げる行為をいう。具体的には、刑法上の内乱、内乱の予備又は陰謀、外患誘致等の行為をなすこと、政治上の主義若しくは施策を推進し、支持し、又はこれに反対する目的をもって刑法上の騒乱、現住建造物等放火、殺人等の行為をなすこと等である。

 

 これは単に、法律のQ&Aですね。ちなみにですが、以前の中華人民共和国刑法では、これらを「反革命罪」と規定していましたが、国際司法協力上問題があるため、今では「危害国家安全罪」と改められています。

 

二 昭和五十七年四月一日、第九十六回国会、参議院法務委員会に於いて、公安調査庁は「破防法」に基づく調査対象団体として、左翼関係として七団体、右翼関係として八団体ある旨答弁されていると承知するが確認を求める。


三 二にある「左翼関係として七団体」に日本共産党は含まれているか、また、平成十一年十二月二日、第百四十六回国会、参議院法務委員会に於いても、「公安調査庁長官にお尋ねしますが、平成元年の二月に衆議院予算委員会で不破委員長が、共産党破防法の調査対象団体になっていることについて質疑していますが、今日でも調査対象団体でしょうか。国民の多くはまさかと思っているんじゃないかと思いますが、その点についてお答えいただきたいと思います。」との質問に、「御指摘の点につきましては、今日でも調査対象団体でございます。」と答弁されているが、現在も公安調査庁は、日本共産党を「破防法」に基づく調査対象団体と認識しているか、確認を求める。

 

二及び三について

 御指摘の昭和五十七年四月一日参議院法務委員会において、鎌田好夫公安調査庁長官(当時)が、破壊活動防止法に基づく当時の調査対象団体の数について「いわゆる左翼系統といたしまして七団体、右翼系統といたしまして八団体程度」と答弁し、当該調査対象団体の名称について「左翼関係としましては日本共産党・・・等でございます」と答弁している。
 日本共産党は、現在においても、破壊活動防止法に基づく調査対象団体である。

 「ちゃんと当時の答弁どおり、日本共産党は調査対象団体だよ」と、非常に明確な答弁ですね。

 

四 昭和五十七年四月二十日、第九十六回国会、衆議院地方行政委員会に於いて、警察庁は「ただいまお尋ねの日本共産党につきましては、民青を含めまして、いわゆる敵の出方論に立ちました暴力革命の方針を捨て切っていないと私ども判断しておりますので、警察としましては、警察法に規定されます「公共の安全と秩序を維持する」そういう責務を果たす観点から、日本共産党の動向について重大な関心を払っている」旨答弁されているが、現在も警察庁は、日本共産党は暴力革命の方針を捨て切っていないと認識されているか、見解を求める。

 

四について

 警察庁としては、現在においても、御指摘の日本共産党の「いわゆる敵の出方論」に立った「暴力革命の方針」に変更はないものと認識している。

 

警察庁としては、ご指摘どおり、日本共産党は暴力革命を志向している不穏分子だと認識しています」という、こちらもストレートないい答弁ですね。

 なお、「敵の出方論」ですが、そもそもマルクスは、民主主義制度下での合法闘争を否定していないとしていながらも、たとえ民主的な方法で社会主義政権が誕生したとしても、反革命勢力による武力鎮圧は不可避であり、最終的には暴力革命が必要になると説いています。チリでは実際に民主な方法で誕生した社会主義政権が軍のクーデターでポシャっているので、たぶん正しい

 

 五 昭和二十年八月十五日以後、いわゆる戦後、日本共産党が合法政党となって以降、日本共産党及び関連団体が、日本国内に於いて暴力主義的破壊活動を行った事案があるか確認を求める。

 

五について

 お尋ねのうち、「関連団体」については、その具体的な範囲が必ずしも明らかではないため、お答えすることは困難であるが、政府としては、日本共産党が、昭和二十年八月十五日以降、日本国内において暴力主義的破壊活動を行った疑いがあるものと認識している。

 質問に「関連団体」をぶち込んでいるのは、とてもいいですね。昭和26年に武装闘争路線を定めた「51年綱領」の後、日本共産党は現在につながる宮本派と、武装闘争路線の徳田派(日本共産党行動派)に分裂、宮本派は「51年綱領」を撤回しているため、質問に「関連団体」も入れたのでしょうか。

 日本共産党による「武装闘争黒歴史化」の努力を無視して「共産党は戦後もテロをしていたぞ」と宣戦布告する、いい答弁です。

 

六 平成元年二月十八日、第百十四回国会、衆議院予算委員会において、石山政府委員が述べられている、日本共産党のいわゆる「敵の出方論」、並びに、同委員会に於ける不破委員の「政権についたときにその共産党の入った政権なるがゆえに従わないという勢力が出た場合、そういう勢力がさまざまな暴挙に出た場合、それに対して黙っているわけにはいかない、そういうのは力をもってでも取り締まるのが当たり前だ、これは憲法に基づく政府の当然の権利でしょう。そういうことについて我々は綱領に明記しているわけです。」に対する政府の見解を求める。

 

六について

 お尋ねについては、御指摘の平成元年二月十八日の衆議院予算委員会において、石山陽公安調査庁長官(当時)が、御指摘の不破哲三委員の発言を踏まえて、「昭和三十六年のいわゆる綱領発表以降、共産党は議会制民主主義のもとで党勢の拡大を図るという方向で着々と党勢拡大を遂げられつつあることはお示しのとおりでございます。ただ問題は、それは政治的な最終目標であるのかあるいは戦略または戦術の手段であるのかということの問題でございます。私どもはそれらに対しまして、今冷静な立場でもって敵の出方論何かにつきましても調査研究を進めておる段階でございまして、今のところその結果として直ちに公党である共産党に対し規制請求すべき段階に立ち入っているとは思わないから請求もしていないということであります。なお、敵の出方論について今御教示を賜りましたが、一つだけ私からも申し上げておきたいことがございます。御存じのとおり、政権確立した後に不穏分子が反乱的な行動に出て、これを鎮圧するというのは、たとえどなたの政権であろうとも当然に行われるべき治安維持活動でございます。ところが敵の出方論という中には、党の文献等を拝見しておりますると、簡単に申しますと、三つの出方がございます。一つは、民主主義の政権ができる前にこれを抑えようという形で、不穏分子をたたきつけてやろうという問題であります。それから第二には、民主主義政権は一応確立された後に、その不満分子が反乱を起こす場合。三番目は、委員御指摘のような事態であります。ですから、それらにつきまして一部をおっしゃっておりますけれども、その全部について敵の出方論があり得る」と答弁しているとおりである。

 公安調査庁として、「敵の出方論」については調査研究を進めつつも、「今のところその結果として直ちに公党である共産党に対し規制請求すべき段階に立ち入っているとは思わないから(破防法適用の)請求もしていない」とのことです。

 結論としては、「共産党は戦後もテロ行為をしていた疑いがあり、今も暴力革命を企てていると見られる不穏分子だが、今のところは直ちに規制するには及ばない」というところでしょうか。

 万が一共産党が連立入りでもしたら、警察や自衛隊はどう反応するのか、見ものですね。

 好質問主意書ですが、鈴木貴子代議士は自民党に入ってしまったため、当面質問主意書を提出する機会がなさそうなのが残念です。