国会「好・珍質問主意書」

本ブログは、衆参両院に提出された質問主意書と答弁書の中から、「これは」というものを、独断と偏見で選び、面白がる目的で設立しました。

「北朝鮮のスリーパーセルの活動に関する質問主意書」立民・逢坂誠二君(衆)

 先日、三浦瑠麗氏の「北朝鮮スリーパーセル大阪潜入発言」が物議を醸しました。大阪には一般人を装った北朝鮮の破壊工作員が多数潜伏している、というような、まあ普通に考えてちょっとまずい発言だったわけですが、なにがまずいかといえば、「本当にそうなんじゃないか」という恐怖心を煽ってしまうところですよね。

 どうでもいいですが、三浦氏(下写真、本人Twitterより)の雰囲気、

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 見るたびに、メジャーリーガー級のテロリストであるところの日本赤軍の最高指導者、重信(本名:奥平)房子服役囚の若いころを連想してしまいます。

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 まあ、「だからなんだ」と言われても「美人ですね」くらいしかありませんが。

 本題に戻りましょう。

 おなじみ、立憲民主党逢坂誠二(北海道8区)が、「これほんと?」という質問主意書を提出、答弁書が公表されました。まあ、この手の質問は基本的に公開すると我が方の手札を見せるようなものなので回答を得るのは難しいところですが、興味深い質問ではあります。右紹介する。

北朝鮮のスリーパーセルの活動に関する質問主意書


 平成三十年二月十一日、フジテレビの「ワイドナショー」に出演した東京大学に所属する国際政治学者は、米国と北朝鮮の間で戦争が起きた場合、金正恩が殺されたとしても「スリーパーセル」という組織が活動すると指摘した。
 スリーパーセルとは一般市民を装って潜伏している北朝鮮工作員を指し、国際政治学者は、「ソウル、東京、大阪に潜んでいます。いま大阪がヤバいといわれる。首都よりほかの大都市が狙われる可能性がある」と発言した。日本に北朝鮮の暗殺部隊が潜んでいるという情報は、ネット上で議論になり、大阪に在住する韓国籍の住民をスパイ呼ばわりして憎悪を扇動したなどと非難が多くなされた。
 元韓国国防省北朝鮮情報分析官で拓殖大客員研究員の高永喆氏は、「スリーパーセルは直訳すると「潜伏細胞」。日本には二百人くらい潜伏している可能性があります。年齢は四十~五十代が中心で女性は一、二割ほど。ただし、(その国際政治学者)が言うような暗殺専門ではありません。有事になり、本国からの指令を受けると本格的な活動を開始。「自衛隊が一般市民を傷つけた」といった流言飛語を流したりします。特殊部隊が上陸する際は護衛役、案内役などの三人グループで手引きを担当。指令は北朝鮮から届くラジオ短波放送に数字が隠されていて乱数表で解読します」と述べるとともに、スリーパーセルは武器を所持し、金正男暗殺に使った毒ガスのほかサイレンサー付きの拳銃、ライフル銃を隠している可能性が高いと指摘している。
 このような指摘は必ずしも即座に否定されるべきものではなく、我が国の安全保障上の観点、さらには国民的な不安と関心から、北朝鮮スリーパーセルに関する情報収集と行動の把握は、喫緊の課題であると考えられる。他方、地上波のメディアで、正確な根拠を示さず東京大学に所属する研究者が「いま大阪がヤバいといわれる。首都よりほかの大都市が狙われる可能性がある」と発言したことは、ヘイトスピーチも含めた議論の発端になっており、多くの国民に北朝鮮に対する不安を増大させている。
 このような事実を踏まえ、以下質問する。

 ご指摘のとおり、北朝鮮工作員の脅威は「必ずしも即座に否定されるべきものではない」のが困りものですね。ドイツなどの欧州諸国では移民による破壊活動を報じると「ヘイト」扱いされるので信頼できる情報が発信されず、それこそネットの真実なんだかフェイクニュースなんだかの境界線が曖昧になるという問題が発生しているので、「論じるべからず」は悪手だと思います。では、質問と答弁本文に移りましょう。

一 我が国に、いわゆる北朝鮮の「スリーパーセル」と呼称される工作員が存在し、潜伏していると政府は考えているのか。政府の見解如何。
二 一に関連して、いわゆるスリーパーセルの実数はどの程度であると推定しているのか。

三 政府は、北朝鮮の行う破壊活動に関して、「いま大阪がヤバいといわれる。首都よりほかの大都市が狙われる可能性がある」との認識を共有するのか。また日本国内の特定の地域について、重点的に破壊活動を抑止する対策を講じているのか。政府の見解如何。

五 北朝鮮金正恩が暗殺あるいは政治的に失脚した場合、北朝鮮の政治的混乱に乗じていわゆるスリーパーセルと呼称される工作員が我が国で破壊活動を行うことは否定できない。かかる事案に関して、我が国に潜伏する北朝鮮工作員への対策は存在しているのか。政府の見解如何。
六 公安調査庁は、「内外情勢の回顧と展望」(平成二十九年一月)において、「朝鮮総聯は、我が国の対北朝鮮措置の影響などを受けた厳しい情勢に危機感を強めており、許宗萬議長を中心とする指導体制を一層強化し、組織の引締めを図っていくとみられる。また、引き続き、基層組織の活性化を通じて組織力の底上げを図るべく、中央幹部を積極的に派遣するなどして地方組織に対する指導を強めていくとみられる」と示しているが、高永喆氏が指摘する「スリーパーセルは直訳すると「潜伏細胞」。日本には二百人くらい潜伏している」、「有事になり、本国からの指令を受けると本格的な活動を開始。「自衛隊が一般市民を傷つけた」といった流言飛語を流したり」する者についての記述はない。政府内で、高永喆氏が指摘する「潜伏細胞」について把握し、適切に国民に情報提供を行い、不安の解消を図るための部署は存在しているのか。政府の見解如何。

 

 

一から三まで、五及び六について

お尋ねの「いわゆる北朝鮮の「スリーパーセル」と呼称される工作員」及び「破壊活動」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、政府としては、北朝鮮工作員について、我が国に存在するか否かを含めその動向に関する情報収集を行っているところ、その収集した具体的な内容に係るお尋ねについては、これを明らかにすることにより、今後の情報収集活動等に支障を及ぼすおそれがあるため、お答えを差し控えたい。

 政府としては、北朝鮮工作員による様々な活動を想定し、関係機関が連携して、国民の生命、身体及び財産を守るために必要な対策を進めているところである。

 

  逢坂代議士、例によって「スリーパーセル」の定義を質問項目に入れていませんが、考えてみると工作員が「一般市民を装って潜伏」しているのは当たり前なので、前文部分での定義も不十分だった感があります。

四 朝鮮籍もしくは朝鮮籍と推定される者について、これまで日本国内で、小銃、迫撃砲などの武器を押収したことはあるのか。

 

 四についてお尋ねの「朝鮮籍もしくは朝鮮籍と推定される者について・・・武器を押収した」の具体的に意味するところが明らかではないため、お答えすることは困難である。

 

  これ、「阪神大震災後に北朝鮮工作員のものと思われる迫撃砲が発見された」という話がデマかどうかという、わりと大事な話ですが、「具体的に何を聞いてるのかわからん」とされていますね。

 問題点を考えてみましたが、まず国語的に、「朝鮮籍もしくは朝鮮籍と推定される者について」ではなく、「~者から」でなくてはならないのでは。

 また、「朝鮮籍」はいいとして、「朝鮮籍と推定される者」ってなんなんですかね。所有者を誰だか特定できていないものを「たぶん朝鮮人だと思う」は問題になるでしょう。例えば、漂流漁船の場合は特定は困難な場合が多く、かつ推定しても差支えはないでしょうが。

 加えて、「朝鮮籍」とすると、「在日朝鮮人を銃刀法違反で検挙した件数ということか?質問の意図としてたぶんそうじゃないと思うし、その数字を公表したら絶対誤解招くよな?」という判断もあるのでしょう。

 とはいえ、「工作員」という枠に絞った場合、束ね答弁ルートになる可能性もあるのでしょうか。阪神大震災のときの案件を出すべきだったのかも知れません。