国会「好・珍質問主意書」

本ブログは、衆参両院に提出された質問主意書と答弁書の中から、「これは」というものを、独断と偏見で選び、面白がる目的で設立しました。

「 第三の性に関する再質問主意書」立民・逢坂誠二君(衆)

 時事問題について内閣へ「これどうなの」とリプを飛ばしては、「質問で使用している語句の定義がわからん、以上」と回答されている立憲民主党逢坂誠二代議士ですが、先日本ブログでも紹介した「 第三の性に関する質問主意書」については腹に据えかねたようで、質問主意書を提出しました。

 毎度毎度「お尋ねの~の意味するところが必ずしも明らかではないため(以下略」と答弁されても質問主意書で定義を書かないので、てっきり答弁書を読んでいないのではと思っていましたが、ちゃんと目を通していたようです。右紹介する。

第三の性に関する再質問主意書

答弁書

 先般提出した「第三の性に関する質問主意書」(質問第三九号)に対する答弁書(内閣衆質一九五第三九号。以下「答弁書」という。)では、「お尋ねの「第三の性」の意味するところが明らかではないため、お答えすることは困難である」と示された。
 「第三の性に関する質問主意書」では、ドイツ連邦の憲法裁判所の判断を紹介しつつ、またオーストラリアやインドの裁判所で、第三の性を公的に認める判断についても言及したところである。このドイツ連邦の憲法裁判所の判断については、二〇一七年十一月九日のニューヨークタイムズ紙は“Germany must create a third gender category for people who do not identify as either male or female or born with ambiguous sexual traits, the country's constitutional court ruled on Wednesday, finding that binary gender designations violated the right to privacy.”(ドイツの憲法裁判所は、男女双方の性的な特性を持たない、男性や女性としても識別できない人々のために、第三の性別分類を作成しなければならないと判断した)と報じており、「「第三の性」の意味するところが明らかではない」との政府の見解には疑義がある。

「「第三の性」は海外でさんざん話題になっているだろ、いい加減にしろ」と、怒っていますね

 

 わが国においては、これに対する公的な取り組みはほとんど進んでいない。その定義として、長浜バイオ大学の麻生一枝氏は、「青少年問題」の平成二十五年十月号で、「心の性そのものが男か女かに単純に二分できるものではない」とした上で、第三の性については、専門家の間でも認識や意見が必ずしも一致せず、学術的にはインターセックスと呼称されていることを紹介し、「典型的な男性の体、あるいは典型的な女性の体に当てはまらない体を持つ人々」であると規定している。また麻生一枝氏はインターセックスという用語について、欧米を中心とする小児内分泌専門家からは性分化疾患という用語を用いることが提案されていることを紹介している。

 

 逢坂代議士、ついに定義を明らかにすることを覚えたようです。論文の注釈みたいですね。なお、前文が長いので、全文は引用していません。では、質問項目に移りましょう。

一 厚生労働省の難治性疾患克服研究事業において、「性分化疾患の実態把握と病態解明ならびに標準的診断・治療指針の作成」が対象とされ国からの支援が行われているが、「典型的な男性の体、あるいは典型的な女性の体に当てはまらない体を持つ人々」が存在することを承知しているのか。政府の見解を示されたい。

 

一について
 お尋ねの「典型的な男性の体、あるいは典型的な女性の体に当てはまらない体を持つ人々」の意味するところが必ずしも明らかではないため、お答えすることは困難であるが、一般論として、先天的に外性器異常等を伴う疾病の患者がいることは承知している。

 

「青少年問題」を参照していないので麻生氏による定義がわからないのですが、どうも厚労省的には定義不十分だったようです。そもそも、論文って参照しているんですかね。していないのなら、そりゃ「典型的な男性の体」は意味不明なのですが、「必ずしも」がついているので、「完全に意味不明」ではないようです。もっといい引用元を探しましょう。

 

二 日本小児内分泌学会がいうところの「中間の性」というものが定義されていることを政府は承知しているのか。見解を示されたい。

 

二について
 平成二十八年十二月に一般社団法人日本小児内分泌学会性分化・副腎疾患委員会が発行した「性分化疾患の診断と治療」において、「「中間の性」といった社会通念はまだ形成されていない」と指摘されており、同学会において、御指摘の「中間の性」の定義がされているとは承知していない。

 

「お前の引用した資料でも定義がなされていないって言ってるしwww」という、完全論破答弁ですね。作成担当者は、おそらく気持ちよかったでしょう。しかし、官庁は学会の発表は参照するようなので、質問主意書で引用するのは有効だと見られます。

 

三 海外では、裁判所の判断にも、「第三の性」あるいは「中間の性」そのものを法的に認め、政府が第三の性である人々が社会生活を営みやすいような措置を取るべきであると示されているが、このような事実を政府は承知しているのか。見解を示されたい。

 
三について

 御指摘のドイツの裁判所における判決について、報道があったことは承知しているが、その事実関係については承知していない。

 

新聞くらい読んでるけど、海外のことは知ったこっちゃない」という、当たり前の回答ですね。そもそも、海外の事例について政府が論評すると内政干渉になりかねないので、質問しても無駄でしょう。

 

四 現行の法制度や政府の政策において、「第三の性」あるいは「中間の性」を配慮したものは存在しているのか。見解を示されたい。
五 わが国において、「第三の性」もしくは日本小児内分泌学会がいうところの「中間の性」に該当する者はどの程度であると考えているのか。政府の把握しているところを示されたい。
六 「第三の性」を認めることは、社会や医学の問題にとどまらず、人権問題に他ならないという見解があるが、これに対する政府の見解を示されたい。
七 ドイツの憲法裁判所の判断や海外における裁判所の判断、日本小児内分泌学会の知見などを踏まえ政府は「第三の性」の存在を現行の法制度に整合させるための検討をはじめるべきではないか。見解を示されたい。

 

四から七までについて

 お尋ねの「第三の性」及び「中間の性」の意味するところが明らかではないため、お答えすることは困難である。

 

 はい、出ました「意味するところが明らかではない」=「お前の言ってること意味不明」

 ちなみに質問主意書は、「再々質問」までは出せます。答弁書作成の担当は、一度あたると再々まで同じ人間が作るので、こうなってくると、逢坂代議士と某厚労官僚の一騎打ちですね。

 果たして逢坂代議士は、「意味するところが明らかではない」と言わせない質問主意書を作成できるのか?!

 続編に期待します。