「電報「不配達」の件に関する質問主意書」社会・小松幹君(衆)
今回ご紹介するのは、かなり古いですが、昭和36年池田勇人内閣の頃に日本社会党(当時)の小松幹代議士により提出された、「母が死んだという電報を受け取れなかったという人がいるけど、どうなってるんだ」という質問。
「へー、電報かあ」
「それは可哀想」
「こんな個別案件、直接内閣に聞いたの?!」
と、色んな意味で衝撃を受ける質問主意書ですが、右紹介する。
電報「不配達」の件について真相調査
日 時 「昭和三十六年七月二十日午後五時五十分」 電報発信人 「大分県宇佐郡四日市町財津ヤス」 電 文 「キチ死ス二一日火葬スグ帰レ返待ツヤス」 電報受取人 「埼玉県大宮市植竹町二ノ八十五番地今成政利」 経過 当電報は、七月二十日、大分県四日市電報電話局で受付け、前記時刻発信したが、大宮市の当人には届かず、その電文が「母死す」の重要事項であつたため受信人である今成政利の精神的、社会的被害は大きく、その損害もまた相当おきてきた。
よつて本人は、この事態を後日知り、真相調査したが、電報不配の真の原因はつかめず、終止符を打たれようとしている。
よつて次の項目につき、政府の見解を伺いたい。
ええっ……個人情報……昔は緩かったんですね。しかも、個別の案件すぎる……。
1 電報不配の真因を詳細に報告されたい。
2 電報局のその後の処置はどうか。
3 本人の社会的、精神的、物質的被害に対し、いかなる処置をとられるか。右質問する。
本当に「今成政利さんが電報を受け取れなかった件について」の質問なんですね。電報局は郵政省の外郭団体である日本電信電話公社の機関ですが、これ、内閣にきくの?と、やはり驚きます。
そして、答弁書。
衆議院議員小松幹君提出電報「不配達」の件に関する質問に対する答弁書
なんと、不配の原因、今成さんの要求と電電公社側の対応について、詳細に答弁しています。
東京電報局と大分電報局から陳謝、法律にもとづき賠償する旨を説明したところ、「金銭の問題ではない」と今成さん側が承服せず、新聞に謝罪文を掲載するよう電報局から頼むよう要求、電報局は履行したものの、新聞社の方で掲載してくれなかったため、謝罪広告にしろと今成さん側が改めて要求したところ、損害賠償額が法定されている建前上、無理があるからご勘弁をと「懇請」、今に至るとのこと。
今成さん側は「勘弁」せず、小松幹代議士にこの話を持ち込み、質問主意書提出に至ったようです。
言ってはなんですが、内閣総理大臣の名義でこんな単なるクレーム処理に答弁していたというのは、かなり驚きます。牧歌的な時代というべきでしょうか。
なお、この答弁書には以下の「(注)」までついています。
(注)この電報の料金(一八〇円)は、八月十五日に発信局から発信人に対して返還した。