国会「好・珍質問主意書」

本ブログは、衆参両院に提出された質問主意書と答弁書の中から、「これは」というものを、独断と偏見で選び、面白がる目的で設立しました。

「国勢調査における同性パートナーの取扱いに関する質問主意書」国民・ 源馬謙太郎君(衆)

「同性パートナー」は地方自治体レベルでの条例制定が各地で進むなど、「流行り」のトピックスという印象があります。個人的には、兵庫県宝塚市の例は、「想像される絵面がいいな」と感じました。

 さて、質問主意書ですが、基本的に法令や閣議決定で定義されていない語句をぶつけても、「お尋ねの~の意味するところが明らかではないため、お答えすることは困難」で返ってくることになっています。現状存在しない制度・枠組みについて質問すると、そういった語句はまだ法令に存在しないため、当然「お答えすることは困難」になるわけで、最近忙しくなってしまったようで質問主意書を出さなくなった逢坂誠二代議士は、この手の質問を得意としていました。

「 第三の性に関する再質問主意書」立民・逢坂誠二君(衆) - 国会「好・珍質問主意書」

 よくよく考えると(いや、考えなくても)当たり前の話で、政府は行政を「処理」する機関であって、新しいことを決めるのは国会の仕事なので、政府からすれば「あなた方で議論してください」という話なのですが、それはそうと、今回取り上げるのは、国民民主党源馬謙太郎衆議院議員静岡8区)提出、「国勢調査における同性パートナーの取扱いに関する質問主意書」。

 早い話が、国勢調査で「内縁の妻」は「配偶者」として集計しているけど、なんで同性パートナーは「配偶者」にならないのか、というご質問です。これは普通にちゃんと政府の仕事ですね。「確かに、なんでだ」と気になりました。

 なお、憲法同性婚はどうたらみたいな部分は、分かりきってるので省略し、答弁のみで内容理解に足ると見られる場合、質問も省略します。以下紹介する。

国勢調査における同性パートナーの取扱いに関する質問主意書

衆議院議員源馬謙太郎君提出国勢調査における同性パートナーの取扱いに関する質問に対する答弁書

(答弁)

二の2及び3について

 国勢調査調査票の「世帯主との続き柄」の設問における「世帯主の配偶者」とは、「世帯主」と婚姻関係にある者(婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。)を意味するものである。また、一の1の後段についてでお答えしたとおり、民法において、同性婚は認められていないことから、国勢調査の結果において、「世帯主」と性別が同一である「世帯主の配偶者」は存在しない。
 このため、国勢調査調査票の集計において、「世帯主」と「世帯主の配偶者」の性別が同一であった場合には、当該国勢調査調査票の性別の記載が誤っている場合等を除き、便宜上、「世帯主の配偶者」を「他の親族」として集計しているところであり、当該集計は、我が国の人口及び世帯の実態を明らかにする国勢調査の目的と矛盾するものではない。

  「内縁関係」が「婚姻関係」に準ずるものである以上、民法上規定されている婚姻の条件を具備している必要がある、という理解ですかね。「なるほど」と感心しました。

 

(質問)

 2 第一回の国勢調査である一九二〇年調査から内縁の配偶者を「配偶者」の選択肢に加えて集計しているが、我が国で初めて内縁の配偶者への支援が法制化されたのは一九二三年改正の工場法第十五条によるものと承知しているが、間違いないか。その上で、一九二三年以前には法制度上定義のなかったものを社会的通念や実態に従って国勢調査の一選択肢に加えているが、前述の結論との整合性をどのように考えるか。

(答弁)

 御指摘の「我が国で初めて内縁の配偶者への支援が法制化されたのは一九二三年改正の工場法第十五条による」の意味するところが明らかではなく、お答えすることは困難である。いずれにしても、第一回国勢調査が行われた大正九年当時、男女間の婚姻制度は存在しており、国勢調査において、婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者については、婚姻関係にある者と同様のものとして取り扱っているところであるが、一の1の後段についてでお答えしたとおり、民法において、同性婚をしようとする者の婚姻の届出を受理することはできないことから、国勢調査において、「世帯主」と性別が同一である者については、婚姻関係にある者と同様のものとして取り扱っていない。

 

 ちょっと質問がよくないですね。

「我が国で初めて内縁の配偶者への支援が法制化されたのは一九二三年改正の工場法第十五条によるものと承知」、内縁関係者への支援の話が突拍子もなく登場し、「なんの話をしているんだ」と思いましたが、好意的に解釈すると、「内縁関係が法制度上認められていなかった頃でも、国勢調査では内縁関係を集計しているだろ」と言いたいのでしょうか。

 そうすると、まずは「法律上、婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者について、婚姻関係にある者と同様のものとして取り扱った例」を明らかにしないと話が進まないと思いますが、どちらかといえば司法判断について聞いたほうがいいでしょうか。

 些か不完全燃焼の観がある質問主意書ですが、「同性同士で内縁関係は認められるか」とは考えたこともなかったので、「豆知識」にカテゴライズしておきます。

 ちなみに検索してみたところ、今年3月、同性同士のカップルを「婚姻に準ずる関係」とする判決が、東京高裁で出たそうです。

「同性カップルにも異性の事実婚と同じ法的保護」二審も認める、同性婚訴訟にはずみ - 弁護士ドットコム

「地裁はアバンギャルド、高裁はコンサバ」というのが裁判所判断の「常識」?なので、素直に「マジか」と声が出ました。国会が何もしなくても今年の国勢調査で「内縁関係」の定義が変わる可能性がありますね。