国会「好・珍質問主意書」

本ブログは、衆参両院に提出された質問主意書と答弁書の中から、「これは」というものを、独断と偏見で選び、面白がる目的で設立しました。

「ヒロポン等の製造並びに中毒患者に関する質問主意書」日共・池田峯雄君(衆)

 今回は歴史的文献、占領下にあった昭和25年に当時日本共産党の池田峯雄代議士より提出された、ヒロポンに関する質問主意書です。覚せい剤取締法施行前のこの頃、シャブは合法でした。

 ヒロポン中毒、シャブ中が巷に溢れているが、これどうよ、という当たり前な質問です。右紹介する。

 

ヒロポン等の製造並びに中毒患者に関する質問主意書

 最近ヒロポン等覚せい興奮剤の中毒患者が急激に増加し、各種の犯罪を犯し、国民の身心を破壞に導びいているが、政府は、これら患者をいくらと推定しているか。
 ヒロポン覚せい剤の製造は、どこの工場で、どれだけ製造を許可し、これをいかなる方法で販売せしめているか。又、いわゆるやみルートなるものについていかなる対策をとつているか。
 製造を全面的に禁止することの可否についての所見如何。
 製造を全面的に禁止した場合、製薬工場のこうむる打撃の程度如何。
 中毒患者の職業別分布状況如何。わからないとすれば、わかるためにどれだけの努力をしているか。
 その他かかる中毒患者の発生を防止し、国民の肉体と精神を守るために、政府の現にとつている施策を明示されたい。

 右質問する。

 

 

 ヒロポン等覚せい興奮剤のいわゆる中毒患者は、犯罪又は青少年の補導等によつて発見せられるものであつて、單なる中毒患者としては発見できないものである。従つて現在のところ中毒患者数を推定する資料はない。
 ヒロポン覚せい剤の製造については、その生産割当は会社別に行つているが、この生産割当の違反は、現在薬事法その他の法規によつて直接に取締ることができないが、不実の報告等については処分することができ、本年七月以降の生産割当及び生産量については別表を参照されたい。覚せい剤の販売方法としては薬事法上劇薬に指定されており、更に同法四十一條第七項の医薬品に指定してあるので、医師の指示又は処方せんによつてのみこれを販売しうることになつている。又、いわゆるやみルートなるものについては、検察当局とも密接な連絡をして無登録業者として処罰している。
 これらの覚せい剤を全面的に製造禁止することについては、医療上必要の点も考えなければならないが、弊害の大なるにかんがみ世論の帰するところであれば、製造禁止もまたやむをえないことと思うが、ただ現行薬事法によつては製造禁止の強制規定がない。
 もし製造を全面的に禁止した場合に、これらの製造業者の受ける経済的打撃については、覚せい剤の生産金額が同社における医薬品生産額の約六〇%を占めているのが、その最高の例であり、中にはかなりの程度の打撃を受けるところもあるかとも考えられます。
 中毒患者の職業別分布状況については、壯年層はよく判明しないが、青少年につきましては、各種の調査報告等を総合した結果によると、大体において無職(これは不良青少年に当ると考えられる。)が一番多く、それに次いで東京都では、有職者(これは露店商、飮食店従業員、ダンサー、特殊喫茶店従業員等を含む。)職工、学生の順になつており、大阪市では工員、日雇労務者、学生の順になつている。しかしこれらはいずれも表面に表われたものであつて、覚せい剤のいわゆる中毒患者は、潜在的なものであるため、は握はできないのであるが、検察当局とも連絡の上調査を続行している。
 政府はこのような中毒患者の発生を防止するため、現行法上できうる限りの措置をとるとともに、本年十二月一日各製造業者にヒロポン等の覚せい興奮剤の生産中止の嚴重な勧告を発している次第である。

 右答弁する。

 当たり前ですが、ちゃんと薬事法で「覚せい剤」が規定されていたんですね。

 全体的に、極めて誠実に答えていて驚きます。

 現行法では覚せい剤を禁止できないが、生産中止勧告をしている。全面禁止をすると、製薬会社が倒産する。

 ポン中については、「無職(これは不良青少年に当ると考えられる。)が一番多く、それに次いで東京都では、有職者(これは露店商、飮食店従業員、ダンサー、特殊喫茶店従業員等を含む。)職工、学生の順になつており、大阪市では工員、日雇労務者、学生の順になつている」。

 約七十年経った今からみて、当時のポン中と製薬会社の状況が、概ね理解できますね。つか、東京都の「有職者」ってなんだよ。

 歴史的資料として、保存しておきます。