国会「好・珍質問主意書」

本ブログは、衆参両院に提出された質問主意書と答弁書の中から、「これは」というものを、独断と偏見で選び、面白がる目的で設立しました。

質問主意書とは?(質問主意書用語集)

 本ブログでご紹介する、「質問主意書」とは何なのか?

 立憲民主党長妻昭衆議院議員のホームページでは、次のように解説されています。

 質問主意書制度とは、国会議員が内閣に文書で質問した場合、内閣は閣議決定のうえ、回答義務を負うもの。巨大な行政機構をチェック・是正出来る武器(国会法74条、75条)。本質問主意書がきっかけで是正された事項も数多い。

参照元質問主意書 | 長妻昭 オフィシャルWEBサイト

 概ね、この説明で正しいと思われますが、「国会議員が内閣に文書で質問」と「閣議決定」の間に、「所管省庁の担当部署の官僚が、答弁書を作成する」というプロセスがあります。ここにおいて、担当者がどんな顔をして答弁書を作成するために残業しているのかを想像する、という愉しみが発生します。

 最近では、田原総一朗氏が会長を務める「NPO法人 万年野党」が、質問主意書の提出件数を議員の評価基準として採用していたりと、「質問主意書をたくさん出すと、活動をちゃんとしていると評価される」傾向もあります。

 しかし、ここで一つ、論点が浮上します。そう、評価されるのは「数」です。質問主意書の「粗製濫造」という四字熟語が、頭に浮かんできます。

 「国民の選良」たる国会議員が、国家公務員試験を及第した「秀才」たる官僚たちに繰り出す「好質問・珍質問」を、答弁とあわせて追っていきたいと思います。

 

質問主意書用語集(最終更新:令和2年3月2日)

 

 あ

【当たる】

 官庁が答弁担当となること。

 

【一時間ルール】

 内閣官房総務官室が「この質問、おたくが所管官庁ですよね」と答弁担当として仮決定した場合、「当たった」部門は「いやこれはうちじゃありません」とたらい回しにしたい場合、一時間以内に返答しなければならない。次に「当たった」部門でも「一時間ルール」が発生し、このキャッチボールを延々繰り返す場合もある。→【割もめ】

 

【木鼻答弁】

 まるで木で鼻をくくったかのような、何も答えていない答弁。単に「木鼻」とも。

 

広辞苑

 閣僚の発言などで用いられた語句について質問があった場合、広辞苑最新版を引用することで、「辞書くらいひけボケ」との意思を表明することが多い。

 

サービス残業

質問主意書答弁書作成及び野党やマスコミからの資料要求への対応について、各府省に確認した限りにおいては、超過勤務命令に従い勤務しているにもかかわらず、それに対する超過勤務手当が支給されていない事例はなかった」ことになってる。

「質問主意書の答弁書作成等に関する質問主意書」民主・長妻昭君(衆) - 国会「好・珍質問主意書」

 

【束ねる】

 複数の質問項目に対して、答弁項目を一つにまとめること。例えば以下のように、「木鼻」との合せ技が用いられる場合も。

一から四について

お尋ねの「〇〇」の意味するところが必ずしも明らかではないため、お答えすることは困難である。

 

 

 

 

 

 

【割もめ】

 所管範囲、答弁担当官庁を押し付け合うこと。(同義語)【消極的権限争い】

 

 

 

 

「二日酔いが病気であるか否かに関する質問主意書」立民・熊谷裕人君(参)

 私は「持病は」と聞かれると「二日酔い」と答えることにしていますが、「二日酔いは病気なのか?」という珍質問を、前国会で立憲民主党の熊谷裕人参議院議員(埼玉県)が提出していました。

「聞いてどうするんだ」という気のする典型的なクソリプ質問主意書ですが、話の種にはもってこいの良質な珍質問でもあると思います。以下、一問一答方式で紹介する。

 

二日酔いが病気であるか否かに関する質問主意書:参議院

 

一 「二日酔い」について、政府としての定義はあるか。また、法律、政令及び省令等で「二日酔い」は定義されているのか。

二 「二日酔い」は病気にあたるのか。政府の見解如何。

四 「二日酔い」に関する法令による規制は、日本国内に存在するのか。

 

一、二及び四について

 お尋ねの「政府としての定義」、「法律、政令及び省令等」、「病気にあたる」及び「「二日酔い」に関する法令による規制」の意味するところが必ずしも明らかではないが、御指摘のいわゆる「二日酔い」については、その要因と発症機序について未解明な部分が多く、医学的に確立された定義は存在せず、また、法律、政令及び省令において「二日酔い」を定義した規定はないと承知している。

 「束ね」「木鼻」答弁ですが、「二日酔い」について医学的に確立された定義もなければ、法律、政令及び省令でも「二日酔い」は定義されていないとのこと。

 言われてみれば「二日酔い」と一口に言っても、「単にまだ酔っ払っている」場合もあれば、頭痛を起こす場合もあり、症状は様々ですね。私は下痢を起こすことが多いですが、太田胃散を寝る前に飲むとよくなることから、どうやら胃酸過多であると見ています。頭痛は脱水症状、と言われていますね。昔なにかの雑誌で読んだ大正製薬の人の言によると、二日酔いの頭痛には正露丸がいいそうです。しじみは何に効くんですかね。と、あまり素人が医療・健康について首を突っ込むのもよくないので、次へ進みましょう。

三 「二日酔い」が病気にあたるとすれば、「二日酔い」の症状の軽減をうたう医薬品、食品などは薬機法の規制を受けるのか。政府の見解如何。

三について

 お尋ねの「病気にあたる」及び「「二日酔い」の症状の軽減をうたう医薬品、食品など」の意味するところが明らかではないため、お答えすることは困難であるが、一般に、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和三十五年法律第百四十五号)第二条第一項に規定する「医薬品」に該当する場合には、同法による規制の対象となる。

  これまた完全に木鼻答弁、何も答えていませんね。

 

五 病気休暇についての取り扱いは、個々の就業規則で定めるべきものとされている。一般的には、病気やケガの療養のために仕事を行えないか否かが病気休暇取得の判断基準になると思われるが、「二日酔い」を理由とする病気休暇取得は認められうるのか。政府の見解如何。

五について

 民間企業においていわゆる病気休暇制度を設ける場合の取得要件について定めた法令はないことから、その取得要件は様々であるため、お尋ねについて、一概にお答えすることは困難である。

 「二日酔いで病気休暇は取得できるのか?」という、極めて興味深い質問ですが、残念ながら「政府の知ったことではない」というケンモホロロな答弁。

 以上、要は「二日酔いについては厚労省として定義していない」とのこと。どうでもいいですが、熊谷裕人議員って飲兵衛なんですかね。

 

「マスクの買い占め・転売行為に対し、物価統制令、国民生活安定緊急措置法、買い占め防止法等を活用することに関する質問主意書」N国・浜田聡君(参)

 私個人として最も好きな我が国の現行法は、物価統制令(昭和21年勅令第118号)です。

 支那事変(本ブログにおいて所謂「日中戦争」呼称は昭和12年9月2日閣議決定「事変呼称ニ関スル件」に準拠する)中に制定された価格等統制令にかわって占領下に制定された所謂「ポツダム勅令」ですが、いずれにしても大日本帝国憲法下に制定された「勅令」なので、違反は即ち「勅令違反」となるという「一度でいいから言ってみたい」ワードであることと、「公衆浴場の料金は統制価格」と思うと、なんとなくニヤけてしまうことが推しポイントです。

 また、完全に余談ですが、昭和39年公開「モスラ対ゴジラ」には、伊勢湾に漂着したモスラの卵を興行用に買い取った主が、買取価格が半端だと指摘されて「馬鹿言っちゃいかん、これは統制価格だよ、鶏卵一つの公定価格が何円……」と答える掛け合いがあり、「この頃まだ食料品にも適用されていたのか」と驚いたりもします。

 さて、本題。本ブログで質問主意書を紹介するのは「中核派・前進チャンネル」質問に続いて早くも2度目、NHKから国民を守る党の浜田聡参議院議員(全国比例区)より、「マスクの買い占め・転売行為に対し、物価統制令、国民生活安定緊急措置法、買い占め防止法等を活用することに関する質問主意書が提出されました。よく調べましたね。

 参議院質問主意書PDFはテキスト化されておらず、手打ちは手間ですし、質問内容は題のとおりなので、本文はリンク先をご参照ください。右紹介する。

マスクの買い占め・転売行為に対し、物価統制令、国民生活安定緊急措置法、買い占め防止法等を活用することに関する質問主意書:参議院

 さて、気になる答弁ですが、ちゃんと詳細に答えています。

一について
 インターネットを用いたマスクの転売事例が散見されているものの、生活関連物資等の買い占め及び売り惜しみに対する緊急措置に関する法律(昭和四十八年法律第四十八号)第二条第一項に規定する事態とまでは認められない現段階においては、同項の規定によりマスクを特別の調査を要する物資として指定する状況ではないと考えている。また、現在の全般的な物価動向からみて、国民生活安定緊急措置法(昭和四十八年法律第百二十一号)第三条第一項に規定する事態とまでは認められない現段階においては、同項の規定によりマスクを特に価格の安定を図るべき物資として指定する状況ではないと考えている。(以下略)

 「インターネットを用いたマスクの転売事例が散見されているものの」と、「仕事しています」アピールをしつつも、国民生活安定緊急措置法や買い占め防止法を適用するほどではないと判断しているとのこと。

「以下略」として手打ちを端折った部分では、「中国からのマスクの輸入が滞っているので増産要請や、あれこれ仕事をしている」とアピールしています。コロナ関係は木鼻をやるとさすがに怒られると思っているのか、仕事している感を出そうとしているのか、全体的に「聞かれてもいないことも答える」スタイルになっているように見受けられます。まあ、やってくれたほうがそりゃいいので、文句はありませんが。

 続いて、この質問のキモの物価統制令への答弁

 二について
 お尋ねについては、個別の事案に即して判断されるべきものと考えており、一概にお答えすることは困難である。

 うーん、先程の経産省が作ったと思われる「仕事してまっせ」アピールとは打って変わった、適用するとも言わないが、適用できる可能性も示す、「THE警察庁答弁」ですね。

 これは私の「偏見による感想」ですが、おそらく暴力団極左暴力集団の構成員がマスクを転売した場合、物価統制令違反の摘発例が新たにできて面白いのではと思います。私なら、「マスクを不当に高い価格で販売したとして、警視庁公安部は◯月◯日、〇〇派活動家のダレガシを物価統制令違反の疑いで逮捕した」というニュースを肴に日本酒で言えば5合くらい酒が飲めます。

 そういえば、国民生活安定緊急措置法、買い占め防止法、物価統制令の主務官庁はいずれも経産省だと思いますが、この質問主意書では、質問項目を「国民生活安定緊急措置法、買い占め防止法」が「一」、「物価統制令」は「二」とし、「二」では平成年間にダフ屋が「司法警察職員」によって摘発された例をひいて「司法警察職員は(略)摘発可能か」と、間接的に警察庁をご指名しています。

  もし仮に、意図的に質問項目を答弁して欲しい官庁別に分けているとしたら、ちゃんと「作法」を理解した、ハイレベルな質問主意書ということになるのでは。

 かつ、例の引き方が「京都府警」や「警察官」のような一般に広く浸透しており、かつ法律・行政上も「正しい」用語ではなく、「司法警察職員」という、この表現だと他に海上保安官とかも入ってしまうから、質問対象を明らかにするのなら「警察官」のほうがいいような「お硬い」法律用語なのは、「慣れていないけれども、ちゃんと勉強している」という印象を受けました。

 正直なところN国については、公職の候補者から「あれなんですか?」とN国の地方選挙候補者について尋ねられた際、「ああ、馬鹿です」と答えた程度の評価でしたが、浜田聡参議院議員は、好質問メーカーとして期待できます。本ブログは、浜田聡参議院議員を応援します。

 

「電報「不配達」の件に関する質問主意書」社会・小松幹君(衆)

 今回ご紹介するのは、かなり古いですが、昭和36年池田勇人内閣の頃に日本社会党(当時)の小松幹代議士により提出された、「母が死んだという電報を受け取れなかったという人がいるけど、どうなってるんだ」という質問。

「へー、電報かあ」

「それは可哀想」

「こんな個別案件、直接内閣に聞いたの?!」

と、色んな意味で衝撃を受ける質問主意書ですが、右紹介する。

電報「不配達」の件に関する質問主意書

電報「不配達」の件について真相調査

  日   時 「昭和三十六年七月二十日午後五時五十分」
  電報発信人 大分県宇佐郡四日市町財津ヤス」
  電   文 「キチ死ス二一日火葬スグ帰レ返待ツヤス」
  電報受取人 「埼玉県大宮市植竹町二ノ八十五番地今成政利」

  経過 当電報は、七月二十日、大分県四日市電報電話局で受付け、前記時刻発信したが、大宮市の当人には届かず、その電文が「母死す」の重要事項であつたため受信人である今成政利の精神的、社会的被害は大きく、その損害もまた相当おきてきた。
   よつて本人は、この事態を後日知り、真相調査したが、電報不配の真の原因はつかめず、終止符を打たれようとしている。
   よつて次の項目につき、政府の見解を伺いたい。

  ええっ……個人情報……昔は緩かったんですね。しかも、個別の案件すぎる……。

1 電報不配の真因を詳細に報告されたい。
2 電報局のその後の処置はどうか。
3 本人の社会的、精神的、物質的被害に対し、いかなる処置をとられるか。

 右質問する。

  本当に「今成政利さんが電報を受け取れなかった件について」の質問なんですね。電報局は郵政省の外郭団体である日本電信電話公社の機関ですが、これ、内閣にきくの?と、やはり驚きます。

 そして、答弁書

衆議院議員小松幹君提出電報「不配達」の件に関する質問に対する答弁書

  なんと、不配の原因、今成さんの要求と電電公社側の対応について、詳細に答弁しています。

 東京電報局と大分電報局から陳謝、法律にもとづき賠償する旨を説明したところ、「金銭の問題ではない」と今成さん側が承服せず、新聞に謝罪文を掲載するよう電報局から頼むよう要求、電報局は履行したものの、新聞社の方で掲載してくれなかったため、謝罪広告にしろと今成さん側が改めて要求したところ、損害賠償額が法定されている建前上、無理があるからご勘弁をと「懇請」、今に至るとのこと。

 今成さん側は「勘弁」せず、小松幹代議士にこの話を持ち込み、質問主意書提出に至ったようです。

 言ってはなんですが、内閣総理大臣の名義でこんな単なるクレーム処理に答弁していたというのは、かなり驚きます。牧歌的な時代というべきでしょうか。

 なお、この答弁書には以下の「(注)」までついています。 

(注)この電報の料金(一八〇円)は、八月十五日に発信局から発信人に対して返還した。

 

「国務大臣のやじに関する質問主意書」立民・ 熊谷裕人君(参)

 ここ数日も、辻元清美代議士に対して安倍総理が「意味のない質問だよ」と野次ったことが話題になっていますが、安倍総理の野次好きは前からのこと。

 昨年の第200回国会で立憲民主党所属の熊谷裕人参議院議員(埼玉)が、「国会議員の国会での発言については、憲法で免責特権が認められているが、憲法学説上国務大臣は対象外ではないのか?」「内閣総理大臣による野次は不適切では?」との質問主意書が提出されました。質問というよりクレームですね。

 「免責特権と不規則発言って関係なくね?」と素朴な疑問がありますが、三木武吉による伝説の野次まで引っ張り出し、「野次は議会の華」との一面まで紹介していて面白いので、右紹介する。

国務大臣のやじに関する質問主意書
  昨今、国会審議で安倍総理が閣僚席から何度もやじを飛ばし、問題となっている。
 やじは議長の許可を得ない私語であって、議長が、不規則発言としてこれを制止するものとされている。他方、やじは議会の華とも言われ、良いやじは議会政治の活性化に寄与する一面もある。良いやじはユーモアの精神から生まれるとの指摘もあり、議院規則、典礼に通じていること、冷静でありつつ、決してやり過ぎないことなどが本来の意味のやじの要件とされる。議会やじ史に残る代表例としてしばしば引用されるのは、大正九年衆議院本会議における三木武吉議員の「ダルマは九年」とのやじである。このやじは高橋是清大蔵大臣へのユーモアの精神に富んだ寸鉄人を刺すものであり、また、同議員が一議員として行ったものであった。

  野次についての一般論は、このとおりだと思いますね。野球場での伝説の野次は、「清原ー、お前の家で買うた電球つかへんぞ」でしょうか。


 日本国憲法第五十一条では、「両議院の議員は、議院で行つた演説、討論又は表決について、院外で責任を問はれない」と示されている。
 本条は、「国会における言論の自由を最大限に保障し、国会議員がその職務を行うに当ってその発言について少しでも制約されることないようにしようとの趣旨」の規定であるが、「本条の特典は、もっぱら両議院の議員に対してのみみとめられるもの」であり、「議員以外の者にはおよばないと見るを正当とする」(宮澤俊義著、芦部信喜補訂「全訂 日本国憲法」、日本評論社)と解されている。
 早稲田大学の長谷部恭男教授は、「国会議員の国会での発言については、憲法で免責特権が認められています。全国民の代表として幅広く自由に議論を展開する必要があるからです。しかし、国務大臣は免責されないというのが憲法学界の通説です。国務大臣は政策遂行について説明責任を果たすために国会で答弁するのであって、一議員と同じ立場で自由に発言することは到底認められません」(朝日新聞、平成二十七年三月二十九日)との認識を示している。
 右を踏まえて、以下質問する。

 これ、質問主意書でよくあることなのですが、学説開陳してどうするんですかね。政府というか、お役所は学説にもとづいて判断するわけではないのですが。学説にもとづいて判断すべきなら、「学会」なり「学者」が法解釈権をもつという、よくわからない制度になるわけで。

 あと、不規則発言とこの場合の「自由に発言」は、多分意味が異なる気がします。それはそれとして、以下、質問項目。

一 国務大臣には、日本国憲法第五十一条でいう国会での発言の免責特権は必ずしも認められていないという理解でよいか。

二 日本国憲法第五十一条の趣旨からしても、国務大臣は、国会において一議員と同じ立場で自由に発言することは到底認められないのではないか。

三 前記一に関連して、国務大臣には国会での発言の免責特権は必ずしも認められておらず、国務大臣が品格のないやじを飛ばすことは「不規則発言」に他ならず、議会政治の活性化に寄与するものでもなく、不適切ではないか。

四 閣僚席からのやじは本来行われるべきではなく、ましてや国会での国政全般について説明を行うべき政治的義務のある内閣総理大臣がやじを飛ばすことは、日本国憲法第七十二条および第五十一条の趣旨に反すると考えるが、政府の見解如何。

  はい、答弁はこちら。

一から四までについて

 国会の両議院の院内における発言の在り方については、国会の運営に関することであり、政府としてお答えする立場にない。なお、憲法第五十一条は、両議院の議員が、議院で行った演説、討論又は表決について、院外で責任を問われないことを定めたものである。

 

「国会運営について、政府は知らん」という、言われてみりゃ当たり前だよな、というお話。憲法第五十一条については、どうやら「不規則発言」について定めたものではないというようですが、「不規則発言」について「規則」しているわけではないのは、これも当たり前かと思います。

 そんなわけでこれは「クレーム珍質問」に分類すべきかもしれませんが、「野次のあり方」についての前文がよかったので、「好質問」とします。

 これは余談で、かつ今は知りませんが、学生弁論でも「野次は弁論の華」と言われると同時に、しばしば「ニコ動の弾幕」のような野次の嵐となり、それこそ「単なる罵詈雑言」となる場合もありました。しばしば「野次」を禁止してはとの話も持ち上がりながらも、「不規則発言禁止って意味不明では」との疑問もあり、私の知る限りでは完全に禁止されるには至りませんでした。

 また、実際に東京大学・第一高等学校弁論部主催の弁論大会で「野次禁止」と定められたこともありましたが、司会の制止を無視して野次を続け、「ひとりごとです」と言い張る御仁もあり、その時は「禁止したところで制御不能」と判断されたそうです。

 その数年後も「野次禁止」が導入されたことがあると聞いたことがありますが、その際には机を叩く蛮行で抗議した女性がいたと聞きます。なお、前出の御仁と同じ大学でありますが、どこかはご想像におまかせします。

 いずれにしても、熊谷議員による「良いやじはユーモアの精神から生まれるとの指摘もあり」「冷静でありつつ、決してやり過ぎないことなどが本来の意味のやじの要件とされる」との言は、「野次要領」として、議会にとどまらず、野球観戦などにも適用していきたいところです。

「安倍総理が「憲政の敵」であることに関する質問主意書」無所属・小西洋之君(参)

 今回は前200回国会より、Twitterで「クイズ小西」との異名をとっている無所属(参院会派は立憲民主党・民友会)、小西洋之参議院議員(千葉)による、「安倍総理が「憲政の敵」であることに関する質問主意書」なるタイトル出落ち、質問でもなんでもない質問主意書をご紹介します。

安倍総理が「憲政の敵」であることに関する質問主意書

 以下質問と答弁一部抜粋。

問「(安倍総理が)憲政史上最長の通算在任日数と評価されることについて、政府はどのような見解を有しているか」

答「お尋ねの「憲政史上最長の通算在任日数と評価」の意味するところが必ずしも明らかではないが」「「この間、衆議院参議院、六回の国政選挙を通じて国民の皆様から強く背中を押していただき、一日一日、お約束した政策を実現するために努力を重ねてまいりました。その一日一日の積み重ねによって今日という日を迎えることができた」旨述べているとおりである」

問「政府は、一般に「憲政」という文言の意味をどのように理解しているか」

答「例えば、広辞苑(第七版)によれば、「憲法に基づいて行う政治」等とされていると承知している」

「(略)安倍総理こそ「憲政の敵」というべき者であって、「安倍総理の通算在任日数が憲政史上最長となった」などと評価されるべきではないと考えるが政府の見解を示されたい

答「お尋ねの趣旨が明らかではなく、お答えすることは困難である」

 答弁作成させられた人間の苦笑が目に浮かぶような、質問というより正しく罵詈雑言ですが、小西洋之議員は元郵政官僚であり、質問主意書の処理フローを理解しているはずなので、確信犯的に答えが返ってくることを前提としない、言いっぱなし質問主意書を提出しているものと考えられます。たちが悪いですね。

 

 以前、質問主意書を次のように分類しました。

1.議員がニュースを見て思ったことを内閣へリプライする「クソリプ質問」

2.議員が「そういや、これってどれくらいあるの?」と思いついたことを内閣へ問い合わせる「豆知識型質問」

3.議員が地元で受けた陳情を内閣へたらいまわしする「陳情たらいまわし質問」

4.「UFOがきたらどうするの?」のようなネタ質問

5.意味不明質問

 これに、「最初から答弁を期待しない確信犯質問」を加えたいと思います。

「元首相の訃報について中核派による不謹慎な動画が公表されたことに関する質問主意書」N国・浜田聡君(参)

 今回は、とうとう出ましたNHKから国民を守る党所属、浜田聡参議院議員(全国比例)による質問主意書です。

 大勲位、海軍ポリティシャンこと中曽根康弘元総理が死去。毎年憲法記念日憲政記念館で開催される改憲集会のたびに、「おお!大勲位が動いている!」と生存を確認していたのですが、昨年は欠席したので、「もしやそろそろか」とは案じていましたが、衝撃。

 「問題です、官僚出身で存命の総理経験者は一人しかいませんが、何省出身でしょうか?答えは、内務省(昭和22年末廃止)でしたー!」というクイズも、もう二度と出題できなくなってしまいました。

 様々な感慨のあった大勲位の死去ですが、大喜びした人々も

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YOUTUBE「前進チャンネル」より

 「極左暴力集団中核派YOUTUBEで公開している「前進チャンネル」で、「中曽根の死を祝って、乾杯~」と、祝杯をあげていました。

 これについて浜田聡参議院議員議員が、

「前進チャンネルについて、政府はどう把握しているの?」

表現の自由とかあると思うけど、この動画どうよ?」

 との質問主意書を提出。思ったことをとりあえず質問するタイプのクソリプですね。

 実は答弁書が出る前からこの質問主意書には個人的に注目しており、勝手に答弁を予想していました

 一については警察庁警備局の「治安の回顧と展望」にも記載があるので、「極左暴力集団中核派による勢力拡大を目的とした宣伝手段と承知。引き続き動向に注視する」といった熱のこもった答弁を警察庁警備局が作ると予想

 二については、「言論の自由」というからみから、内閣府法制局から、「お尋ねの当動画に対する政府の見解について意味するところが必ずしも明らかではないため、お答えすることは困難である」といった塩答弁にすると、躁鬱じみた味わい深い好答弁になるなと、期待していました

 では、実際の答弁や如何に。質問全文とともに、右紹介する。

元首相の訃報について中核派による不謹慎な動画が公表されたことに関する質問主意書

 「戦後政治の総決算」を掲げ、国鉄の民営化や日米安全保障体制の強化などに取り組んだ、中曽根康弘内閣総理大臣(以下「元首相」という。)が令和元年十一月二十九日、都内の病院で逝去されたという報道があった。謹んで哀悼の意を表します。
 故人の業績について色々な意見があり、賛否両論があることは我が国の民主主義の観点からは望ましいと考えるが、今回の元首相の逝去に際し、看過しがたい動画が目に入ったので、今回質問主意書を提出する。
 動画サイト「YouTube」において、令和元年十一月三十日に「前進チャンネル」なるアカウントにより、元首相の訃報を祝う意図の動画(以下「当動画」という。)が公表された。十二月五日現在、当動画の再生回数は四万回台を数えている。これらの状況を踏まえ、以下質問する。

一 「前進チャンネル」はいわゆる中核派のアカウントであると考えられるが、政府の把握するところを明らかにされたい。

二 表現の自由との兼ね合いもあり、政府としての認識を示すことに困難な点があることを理解した上で問うが、当動画に対する政府の見解を伺いたい。

  右質問する。

 

答弁

一について

 御指摘の「前進チャンネル」は、共産主義革命を起こすことを究極の目的としている極左暴力集団の一つである革命的共産主義者同盟全国委員会(以下「中核派」という。)が作成したものと承知している。

二について

 政府として、中核派が作成した個々の動画の主張内容について逐一見解を述べることは、今後の警察活動に支障を来すおそれがあることから、差し控えたい。

   一は普通に「極左暴力集団がやってるやつだよ、知ってるよ」という警察庁警備局による答弁でしたが、二も警察庁が答えていますね。

 「極左暴力集団に関する政府見解は警察の仕事」ということがわかり、とても結構な質問主意書でした。

 

 

 

 

「 反社会的勢力の定義に関する質問主意書」立民・初鹿明博君(衆)

 こちらはやや旧聞となってしまいましたが前第200回国会、「反社会的勢力」の定義をめぐり、立憲民主党初鹿明博代議士(東京16区)より提出された質問主意書

 菅官房長官による「反社会的勢力は様々な場面で使われ、定義は一義的に定まっているわけではないと承知している」という、これには金融機関も苦笑いな身も蓋もない答弁が飛び出したことに関連して、「いや、定義はしたことあるでしょ、他に用例があるなら教えてくれ、定義がないと困ることもあると思うが、定義するとしたらどう定義するの?」という質問。

 初鹿明博代議士はこれまで数多くのクソリプ質問書を生み出し、本ブログとしては、全体的な傾向として「観点が目新しいわけでもなく姿勢も悪意的かつ作り込み度も低い」と見ており、必ずしも高く評価していませんが、この質問は「そうだよなあ」と言わざるを得ません

 「クソリプ質問主意書」といえば、悪意なく友達にリプライを飛ばすノリで質問主意書を提出するのをライフワークにしていた立憲民主党・逢坂(おおさか)誠二代議士は、政調会長になってから忙しいのか、質問主意書を出さなくなってしまいましたね。

 閑話休題、まず、法律で定義できない理由は官房長官による答弁のとおりで、さらに言えば「広くとる」運用の余地を作り出すことにもあり、概念と具体例を「ふんわりと」決める必要があった、というのが前提でしょう。そこで第一次安倍内閣全閣僚が出席する「閣僚会議申し合わせ」という形により「指針」を定めたわけですが、「反社の定義が一義的に定まっているわけではない」という、狭くとる方向でぼやかすのは如何なものでしょうか。

 また、反社排除は広く進められていますが、概念と具体例も政府として「一義的に定まっていない」ものを根拠に、口座開設や就業などの自由を制限することになるのは、ちょっと問題があるではと疑問があります。

 というわけで、右紹介する。

反社会的勢力の定義に関する質問主意書


 政府は平成十九年、犯罪対策閣僚会議の下に設置された暴力団資金源等総合対策ワーキングチームにおける検討を経て、企業が反社会的勢力による被害を防止するための基本的な理念や具体的な対応について、「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」を取りまとめました。この指針において、「反社会的勢力」とは、「暴力、威力と詐欺的手法を駆使して経済的利益を追求する集団又は個人」と定義し、民間企業においても、この定義のもとに反社会的勢力との関係遮断に取り組んできています。
 ところが、菅官房長官は本年十一月二十七日の記者会見の中で、反社会的勢力は様々な場面で使われ、定義は一義的に定まっているわけではないと承知しているとの発言をしました。
 この発言を受けて、以下政府の見解を伺います。

一 政府は上記指針において定義している「暴力、威力と詐欺的手法を駆使して経済的利益を追求する集団又は個人」以外の意味で「反社会的勢力」という単語を用いたことはあるのでしょうか。
二 他の意味で用いたことがあるのであれば、閣僚や政府参考人等の国会答弁、各種施策の説明資料を含めて実例を全て明らかにし、どのような意味で用いたのかを説明してください。
三 民間企業は上記指針に基づいて、反社会的勢力との関係の遮断や不当な要求等への対応を行ってきたと承知しています。しかし、異なる定義があるとすると対応方針を変更する必要が生じかねません。政府として、改めて「反社会的勢力」とは何かを定義付ける必要があると考えますが、いかがでしょうか。
四 また、定義付ける場合、どのような定義となるのか具体的に示してください。

 右質問する。

 初鹿代議士には珍しく、質問内容と意図が明らかな構成ですね。

 はい、答弁を見てみましょう。

 

一から四までについて

 政府としては、「反社会的勢力」については、その形態が多様であり、また、その時々の社会情勢に応じて変化し得るものであることから、あらかじめ限定的、かつ、統一的に定義することは困難であると考えている。また、政府が過去に行った国会答弁、政府が過去に作成した各種説明資料等における「反社会的勢力」との用語の使用の全ての実例やそれらのそれぞれの意味について網羅的に確認することは困難である。
 なお、御指摘の「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」(平成十九年六月十九日犯罪対策閣僚会議幹事会申合せ)は、暴力団の不透明化や資金獲得活動の巧妙化が進む中で、民間企業が「暴力団を始めとする反社会的勢力」との関係を遮断し、これらによる被害を防止することができるようにする観点から、そのための基本的な理念や具体的な対応について取りまとめたものである。現在、民間企業においては、当該指針を踏まえた上で、「暴力団を始めとする反社会的勢力」との関係の遮断のための取組を着実に進めている実態があるものと承知している。

  束ねて答弁していますが、あえて2つにバラすと、

問:「暴力、威力と詐欺的手法を駆使して経済的利益を追求する集団又は個人」以外の定義はあるのか?あるなら教えて下さい。
答:色々確認するのは大変なのでお答えできません。

問:定義がないと民間企業も困るのでは?定義するとしたらどう定義しますか?

答:反社はその時々で形態が多様なので、あらかじめ定義することは困難。民間企業は「基本的な理念や具体的な対応について取りまとめた」「当該指針」にもとづいて取り組んでいると承知。

 と、いうことになりますが、「基本的な理念や具体的な対応について取りまとめた」指針って、やっぱ「定義」じゃないのか?閣僚会議で取り決めた「指針」が「政府としての定義」でなかったら、一体なんなんだ?「こんなものよく閣議決定したな」と、かなり驚きました。平成三十一年度珍答弁グランプリとして差し支えないでしょう。

 なお、この答弁書を受けて、本国会(第201回)において立憲民主党・櫻井周君(兵庫6区)より、「政府が法解釈にかかわる言葉の定義をコロコロ変えるのは社会に悪影響があると思うがどうか」との趣旨の質問主意書が提出されています。

政府が「定義を定めることは困難」と答弁することに関する質問主意書

 答弁書の該当部分答弁はこちら。

 御指摘の答弁書(令和元年十二月十日内閣衆質二〇〇第一一二号)一から四までについては、「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」(平成十九年六月十九日犯罪対策閣僚会議幹事会申合せ)の内容を何ら否定するものではなく、従来の政府の見解を変更しているものではない。すなわち、御指摘のような「言葉の定義を突如として変更する」というものではない。

  つまり、指針にある「暴力、威力と詐欺的手法を駆使して経済的利益を追求する集団又は個人」との「従来の政府の見解」を変更しているものではないので、言葉の定義は変更していない、とのことですが、じゃあ反社の定義として、少なくとも「暴力、威力と詐欺的手法を駆使して経済的利益を追求する集団又は個人」は含まれるんじゃないのか?と、突っ込まざるを得ない、また訳のわからない答弁書が繰り出されました。

 「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」を否定すると反社排除の取り組みが崩壊するので絶対に否定できない、むしろ有効であると積極的に示さざるを得ず、しかし一方で「一義的に定義できない」で通さなければいけない、というルールで答弁を作らされていると思いますが、これは無理ゲーですね

 意味不明な答弁書がどんどん積み上がっていますが、もちろん閣議決定は政府公式見解なので、日本政府がある限り永遠に前例として残ると思うと、胸が熱くなりますね。